しばらく部屋でへばっていた私は、基地の中を"散策"していた。 「あの16番……」 仕事のせいであろうか、私は意識が朦朧となる中でもカメラを手放さなかった カメラに写っていた映像…… そのカメラもいったんは衛兵に没収されたのだが、副司令官のハミルトンという人が 取り返してくれた もっとも、それぐらいしてもらわないと気がすまない 私は、記者だ。伝えるべきことがあるにもかかわらず伝えられない。 もちろんこんなことは本土でもしょっちゅうある だが、力を以って押さえつけられたことはなかった あっても圧力程度だ 報道規制が自分個人にかけられ、ことのなかった私は、そんなことを考えながら歩いていく さっきから探し続けているのだが、見当たらない 宿舎を出て、ハンガーまで来てしまった (ここ、来ていいんだろうか?) 何しろ空軍基地なのにハンガーのあたりには、衛兵の一人も見当たらない いきなり射殺されてもおかしくない状態をいったん考えてしまうと、私は急速に不安になってきた 運が悪い 「何やってる!」 夕日の中で私は戦闘時の恩人と佇んでいる。 「へへっ、おどかして悪かったなぁ」 まったくだ 声をかけられた時に身の心配をしていた私にとって、それは効果絶大であった 彼も人が悪い 「だが、こんなところで何してた?」 「16番の彼ですよ」 「あいつなら司令のところだ」 どういうことだろうか 「アーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」 無線から聞こえるのは、これから花を咲かせるはずたった種が庭にまかれる前に 燃え尽きてゆく音。 戦況はまったく持って不利だ。 そんなときだった 「こちらブレイズ、手伝いに来ましたよ」 あまりにも軽かったんで何なのか、一瞬理解できなかった だが、すぐに立て直した 「お前そんなこと言えるのかぁ?まぁいまは猫の手でも借りたい気分だ。あとでたっぷり絞ってやる」 速度を落とすことなく突っ込んでくるF-5 すれ違いざまに追い掛け回している敵機に機関銃を浴びせていく 見た瞬間に思った 何とかなるかもしれない だが次の瞬間、ヤツは冷静さを失い力任せに追い掛け回すだけだった その機体と体への負担を無視したその動きは……それは、凄いとしか言いようがなかった 動き”だけ”見たらエースと呼べただろうな だが、エースは常に生きて帰ってくるし、常に生きようとするもんだ すべてをかなぐり捨てたヤツはタダの頭に血が上っただけのパイロットだった だが俺は、見てるだけだった また 負けた また 誓ったハズだった ”何が何でも部下たちを連れてかえる” 自分の無力を悔いた 私は、命の恩人の顔にまた同じように後悔しているであろう人物の顔をかさねずにはいられなかった そして、自分が今生きていることでさえも綱渡りであることに恐ろしくなった